生命活動の予感とAI進化の危機感

最近読んだ本の中で大変感銘を受けた本が「数学する身体」森田真生著です。数学の発祥から始まり独自の視点(私見ですが)で語られているものです。その中での「人工進化」について事例をあげて述べている章があります。「人工進化の研究の中でも少し変わったもの・・・・」で始まるこの例はイギリスの「進化電子工学」を掲げています。

 

人工進化とか進化電子工学などの詳細は別の書物に委ねますが、何が面白かったのか、興味深かったのかについて述べたいと思います。この事例では「異なる音程の二つのブザーを聞き分けるチップを作ること」をFPGAというプログラム可能な集積回路を使ってチップを進化させて目的のチップを完成させるというものです。

 

勿論人間が設計するわけではなく自動で学習して論理回路を完成させていくものですからその進化の結果人間が設計する論理回路と同じものが期待されるわけですが、この場合は違いました。

 

本来通常に人間が設計すると論理回路ですからどうしても必要なチップ数というものは限定されます。しかし、この進化の結果出来上がった論理回路はかなり下回る論理チップ数で構成されていたそうです。通常ではそのチップ数では目的の機能は実現できない。しかし出来ている不思議。

 

詳細にこれを調査した結果、他の論理ブロックとは独立した論理回路が、通常設計エンジニアが嫌がる発生する漏洩ノイズ(不要な磁束など)を生かして目的の機能を実現していたということです。また、この不要とも思える論理回路をとってしまうと機能しないことが確認されたとのことです。

 

これにはびっくりしました。普通に論理的に考えると絶対にできない設計、それを初期に与えられたプログラムが進化させながら論理の枠を超えて実現、しかも通常設計の必要論理チップ数をかなり下回るチップ数で実現したというのは何か無機質なプログラムとか回路からの意思を感じてしまいます。まさに生命活動を感じさせる記事でした。

 

イーロンマスク氏など、AI発達に対する危機感を提唱していますが、今回のこの研究は人間が計りしれない発達を遂げる可能性を示唆した、まさにシリコン生命体の脅威を垣間見る事例だと思います。人型ロボットのアンドロイドがバク転をしたり、急速な自動制御の発達を見るにつれ、今回の事例はある意味さらに危機感をつのらせるレポートだと思います。